「シンクロナイズドモンスター」が私の待っている傑作だった件と、この三週間に読んだ小説たち
ご無沙汰しております。
この三週間、うつに陥ったり、コラージュ活動に励んだり、またうつに陥ったりと地味に波乱の日々でした。
いや、大変なんすよ、うつ者本人も。
さて、DVDで観た「シンクロナイズドモンスター」が、非常にポリティカルコネクトネスにかなった、でもちゃんとボンクラな感性も拒んでいない傑作だったので、興奮のあまり筆を(正確にはKindlefire)執りました。
ポリコレというと、まるで男女の利害が相反するようにとらえられがちな昨今。
「できればポリティカルコネクトネスに配慮した表現を……」と言おうものなら、「わかったわかった!俺たちボンクラの表現は死ねってことだな!」なんて反応が返ってきたり。
ちがう、ちがうんだ!ポリコレに配慮したところで、ボンクラ魂は死なないんだ!なぜなら、女子にだってボンクラはいるんだよ!と叫びたい気持ちになったりしますが、ここで「シンクロナイズドモンスター」ですよ!
フェミニズム的にも、ポリコレ的にも配慮の行き届いた表現と、「怪獣の中の人がアン・ハサウェイ」というボンクラ設定の見事な共存。
しかも、監督脚本してるの、男の人なんやで!
私たちが今の表現に求めているのは、怪獣もロボットもない映画ではなく、こういう豊かさなのだと、わかってもらえると嬉しいんですけどね。
もしかしたら、ラストが男子にだけ厳しい映画だと非難する向きもあるかもしれませんが、ふかふかのソファに象徴される庇護から抜けざるを得なかったヒロインが独りで立つラストであることもお忘れなく。
アン・ハサウェイの映画は、ほとんど見てない私ですが、たまに見ると「レイチェルの結婚」といい、本作といい、ホームランをかっ飛ばしてくれるので好きです。
さて、この三週間に読んだ小説もやっつけますね!
7.「エイジ・オブ・イノセンス」イーディス・ウォートン

- 作者: イーディスウォートン,Edith Wharton,大社淑子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1993/09
- メディア: 文庫
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マーティン・スコセッシの映画版は見ていて、ストーリーは知っているつもりでしたが、実際読んでみるとウォートンのドライな心理描写が輝く小説でした。「イノセンス=無垢」の本当の意味を知ったときは、背筋がひんやり。
8.「夜の姉妹団」

- 作者: 柴田元幸
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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柴田元幸さん編訳の海外文学アンソロジー。ドナルド・バーセルミのシュールな掌編が好みでした。
9.「GRANTA JAPAN with 早稲田文学01」
詳しくはわからない(図書館でタオ・リンと検索したら出てきた)ですが、早稲田文学が海外の作家+日本の作家で編んだ文芸誌。愚直に頭から読んでいたら、ひどい小説ばかりでどうしてくれようと思ったのですが、後半、どんどん面白くなりました。円城塔とか小山田浩子とか本谷有希子とか、恥ずかしながら未読な作者のものも面白かったです。
10.「チェーホフ短編集」

- 作者: アントン・チェーホフ
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2015/02/06
- メディア: Kindle版
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チェーホフ、イケメン。チェーホフ、イケズ。すっかりチェーホフファンになり、浦雅春さんの「チェーホフ」と、児島宏子さんの「チェーホフさんごめんなさい!」も読みました。
11.「耳ラッパ」レオノーラ・キャリントン

- 作者: レオノーラキャリントン,Leonora Carrington,野中雅代
- 出版社/メーカー: 工作舎
- 発売日: 2003/07/01
- メディア: 単行本
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孤高のシュルリアリスト女子(お嬢様)の手になる長編小説。短編集もあるそうなので、そちらも読んでみたい。
12.「訴訟」フランツ・カフカ

- 作者: フランツカフカ,Franz Kafka,丘沢静也
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/10/08
- メディア: 文庫
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赤坂の「双子のライオン堂書店」で開催されているカフカの読書会に参加しているのですが、10月の課題図書がこちら。あ、「審判」とも呼ばれている小説です。
「失踪者」ではまだしもキャラのたっていた主人公が、ここではかなり後景に退いていて、これは「システム」が主役の小説だな、と。
カフカ的主人公って、目の前の些事には突っ込めても、自分が巻き込まれている大きなシステムそれ自体には決して突っ込まない。カフカの生きた時代がファシズム前夜であることを考えると、これってすごく重い……みたいなことを読書会では話しました。
13.「幽霊」イーディス・ウォートン

- 作者: イーディスウォートン,Edith Wharton,薗田美和子,山田晴子
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2007/07
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ウォートン再び。彼女らしい理知的な筆運びで語られる幽霊譚。最後に収録されていたエッセイで判明するのは、ウォートン自身が「幽霊見ちゃう」系の人だという事実。なるほど、理知的な人ほど霊的なものへの親和性が高かったりするもんね、と思いつつ読みました。
【本日の5冊】

- 作者: ロクサーヌ・ゲイ,野中モモ
- 出版社/メーカー: 亜紀書房
- 発売日: 2017/01/24
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 真魚八重子
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2016/04/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 浦雅春
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/12/21
- メディア: 新書
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- 作者: 柴田元幸
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2018/10/11
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- 作者: 山本弘
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/04/08
- メディア: 文庫
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