「シンクロナイズドモンスター」が私の待っている傑作だった件と、この三週間に読んだ小説たち

 ご無沙汰しております。
この三週間、うつに陥ったり、コラージュ活動に励んだり、またうつに陥ったりと地味に波乱の日々でした。
いや、大変なんすよ、うつ者本人も。

 さて、DVDで観た「シンクロナイズドモンスター」が、非常にポリティカルコネクトネスにかなった、でもちゃんとボンクラな感性も拒んでいない傑作だったので、興奮のあまり筆を(正確にはKindlefire)執りました。
 ポリコレというと、まるで男女の利害が相反するようにとらえられがちな昨今。
 「できればポリティカルコネクトネスに配慮した表現を……」と言おうものなら、「わかったわかった!俺たちボンクラの表現は死ねってことだな!」なんて反応が返ってきたり。
 ちがう、ちがうんだ!ポリコレに配慮したところで、ボンクラ魂は死なないんだ!なぜなら、女子にだってボンクラはいるんだよ!と叫びたい気持ちになったりしますが、ここで「シンクロナイズドモンスター」ですよ!
フェミニズム的にも、ポリコレ的にも配慮の行き届いた表現と、「怪獣の中の人がアン・ハサウェイ」というボンクラ設定の見事な共存。
しかも、監督脚本してるの、男の人なんやで!
 私たちが今の表現に求めているのは、怪獣もロボットもない映画ではなく、こういう豊かさなのだと、わかってもらえると嬉しいんですけどね。
 もしかしたら、ラストが男子にだけ厳しい映画だと非難する向きもあるかもしれませんが、ふかふかのソファに象徴される庇護から抜けざるを得なかったヒロインが独りで立つラストであることもお忘れなく。

 アン・ハサウェイの映画は、ほとんど見てない私ですが、たまに見ると「レイチェルの結婚」といい、本作といい、ホームランをかっ飛ばしてくれるので好きです。


 さて、この三週間に読んだ小説もやっつけますね!


7.「エイジ・オブ・イノセンス」イーディス・ウォートン

エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事 (新潮文庫)

エイジ・オブ・イノセンス―汚れなき情事 (新潮文庫)

 マーティン・スコセッシの映画版は見ていて、ストーリーは知っているつもりでしたが、実際読んでみるとウォートンのドライな心理描写が輝く小説でした。「イノセンス=無垢」の本当の意味を知ったときは、背筋がひんやり。
 
8.「夜の姉妹団」

夜の姉妹団―とびきりの現代英米小説14篇 (朝日文庫)

夜の姉妹団―とびきりの現代英米小説14篇 (朝日文庫)

 柴田元幸さん編訳の海外文学アンソロジードナルド・バーセルミのシュールな掌編が好みでした。

9.「GRANTA JAPAN with 早稲田文学01」

GRANTA JAPAN with 早稲田文学 01

GRANTA JAPAN with 早稲田文学 01

 詳しくはわからない(図書館でタオ・リンと検索したら出てきた)ですが、早稲田文学が海外の作家+日本の作家で編んだ文芸誌。愚直に頭から読んでいたら、ひどい小説ばかりでどうしてくれようと思ったのですが、後半、どんどん面白くなりました。円城塔とか小山田浩子とか本谷有希子とか、恥ずかしながら未読な作者のものも面白かったです。

10.「チェーホフ短編集」

 チェーホフ、イケメン。チェーホフ、イケズ。すっかりチェーホフファンになり、浦雅春さんの「チェーホフ」と、児島宏子さんの「チェーホフさんごめんなさい!」も読みました。

11.「耳ラッパ」レオノーラ・キャリントン

耳ラッパ―幻の聖杯物語

耳ラッパ―幻の聖杯物語

 孤高のシュルリアリスト女子(お嬢様)の手になる長編小説。短編集もあるそうなので、そちらも読んでみたい。

12.「訴訟」フランツ・カフカ

訴訟 (光文社古典新訳文庫)

訴訟 (光文社古典新訳文庫)

 赤坂の「双子のライオン堂書店」で開催されているカフカの読書会に参加しているのですが、10月の課題図書がこちら。あ、「審判」とも呼ばれている小説です。
 「失踪者」ではまだしもキャラのたっていた主人公が、ここではかなり後景に退いていて、これは「システム」が主役の小説だな、と。
 カフカ的主人公って、目の前の些事には突っ込めても、自分が巻き込まれている大きなシステムそれ自体には決して突っ込まない。カフカの生きた時代がファシズム前夜であることを考えると、これってすごく重い……みたいなことを読書会では話しました。

13.「幽霊」イーディス・ウォートン

幽霊

幽霊

 ウォートン再び。彼女らしい理知的な筆運びで語られる幽霊譚。最後に収録されていたエッセイで判明するのは、ウォートン自身が「幽霊見ちゃう」系の人だという事実。なるほど、理知的な人ほど霊的なものへの親和性が高かったりするもんね、と思いつつ読みました。

【本日の5冊】

バッド・フェミニスト

バッド・フェミニスト

別冊映画秘宝 厭な映画 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)

別冊映画秘宝 厭な映画 (洋泉社MOOK 別冊映画秘宝)

映画なしでは生きられない

映画なしでは生きられない

チェーホフ (岩波新書)

チェーホフ (岩波新書)

佐藤亜紀「醜聞の作法」、柴田元幸編「いずれは死ぬ身」、バベルの図書館「聊斎志異」

 小説を沢山読むぞチャレンジ第二週です。
 今週は、小説以外の本に色々手を出してしまったのと、後半コラージュ作成にはまりまくってほとんど読まなかったので、低調です。


4. 佐藤亜紀「醜聞の作法」

醜聞の作法 (講談社文庫)

醜聞の作法 (講談社文庫)

 「私にもう少し教養があったら100倍楽しめるのに!」そう思わせてくれる小説家が、現在の日本にいるっていうのは、実に稀有なことだと思うのです。

 本作は18世紀後半のフランス、マリー・アントワネットの時代ですね、を舞台にした書簡体小説。ある侯爵夫妻の夫婦喧嘩にパンフレット(非公式の出版物)が絡むことで、リツイートにつぐリツイートの末、本人特定、公衆を巻き込んだ大騒ぎが起きる様をちょっと皮肉に描いております。
 パリ市民の空騒ぎぶりに現在のネット社会が重ねられていることは容易にわかるし、ストーリーもそれなりにハッピーエンドで何も知らなくても楽しめる作りにはなっているのですが、フランス文学やらフランスの文化に関する知識があれば……と思わせる目配せも沢山あって、それを拾えないことが悔しいのなんのって。

 佐藤亜紀さんの小説は、実に簡潔で読みやすいのですが、そこに注ぎ込まれている教養たるや、めまいがしそうなレベルです。
 小説にコスパを求めるのは野暮のすることながら、コスパ最強の小説であると、胸を張っておすすめできます。

5. 柴田元幸編「いずれは死ぬ身」

いずれは死ぬ身

いずれは死ぬ身

 翻訳家の方のアンソロジーというのは、今まで読む機会のなかった作家や、聞いたこともないような作家の作品を読めるので、実にありがたいものです。
 柴田元幸さんや、岸元佐和子さんのように、「お客を呼べる」翻訳家さんのアンソロジーは、売る側としても売りやすいらしく、いろんな趣向のものが出ていますね。

 「いずれは死ぬ身」の場合、特にテーマなどはないようですが、タイトルから感じられる乾いたユーモアが、共通項になっているかな、と。

 一番好きな作品は、まさかの大御所(恥ずかしながら初読)ウィリアム・バロウズの「ジャンキーのクリスマス」。これ、すごくいい話なんですよ!
 あと、ものすごく長大なメニューのある中華料理屋が出てくる、スチュアート・ダイベックの「ペーパーランタン」(物語の主軸が、この中華料理屋じゃないのが少し不満)、
巨大ナマズと格闘する老人をずっと監視するリック・バスの「準備、ほぼ完了」が気に入りました。

6. バベルの図書館「聊斎志異

 ボルヘスの小説は私には難しすぎますが、アンソロジストとしてのボルヘスさんとは、割りとウマが合いそう。河出文庫で先日読んだ、「ボルヘス怪奇譚集」も大変楽しかった。
 一方、聊斎志異は、南伸坊さんの漫画化作品がすごく好きで、機会があったら読もうと思っておりました。そしたらなんと、ボルヘス選のバベルの図書館シリーズに収められているのを発見。これは良い機会と読む事に。
 いや、面白かったです。突拍子のない幻想譚としての面白さもありますが、一番興味深かったのは、作中人物の倫理観がなんか変な事。
 「生首交換」という話なんて、仲良くなった人外(この時点でおかしい)に、「何かして欲しい事があるか?」と問われて、「妻は良い妻だが、器量がアレなので、そこを何とかして欲しい」と頼む主人公、首をすげ替えられても別に不満も無さそうな妻、2人とも特に罰せられることもなく、一家が栄えてめでたしめでたしなので、作者的には首のすげ替え上等なのでしょう。

 収録作に変身譚が多いのは、ボルヘスの好みなのかな?

【本日の五冊】

マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

マリー・アントワネット 上 (角川文庫)

英仏文学戦記―もっと愉しむための名作案内

英仏文学戦記―もっと愉しむための名作案内

つまみぐい文学食堂 (角川文庫)

つまみぐい文学食堂 (角川文庫)

ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)

ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)


仙人の壺 (新潮文庫)

仙人の壺 (新潮文庫)

カフカ「失踪者」、アリス・マンロー「イラクサ」、シルヴィア・ブラス「ベル・ジャー」

1.カフカ「失踪者」

 

失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)

失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)

 

    カフカには、長編小説が3作品あるのですが、その特徴は、いずれも完結していない事。
    この「失踪者」も未完の小説で、さらに言うと、タイトルも未確定。カフカを世に紹介したマックス・ブロートは、この小説を「アメリカ」と名付けており、角川文庫からはこのタイトルで発売されてます。
 

   ただでさえ難解なイメージのカフカの、しかも完結していない小説なんて読んで面白いのか?とお思いの向きもありましょう。私も、そう思っておりました。
   しかし、ちゃんと面白いのです、これが。
まずもって、カフカってそんなに重たい説を書く人じゃないんですよ。本人も自分の小説を読みながらクスクス笑ってたそうで、シレーっと笑かしに来たりします。
    未完である事に関しても、この小説の場合、おかしくも理不尽なシュチュエーションがいくつか串刺しになってる構成なので、あまり気にならないです。断片的に残っている「オクラホマ野外劇場」(なんか、ものすごく巨大な劇団らしい)のイメージが非常に鮮烈なので、もっと書いて欲しかった気はしますけどね。

 

〈女中に誘惑され、その女中に子供ができてしまった。そこで十七歳のカール・ロスマンは貧しい両親の手でアメリカへやられた〉
    あまりにも、あまりにも素晴らしい書き出しで、この小説は始まります。
     女中の妊娠のくだりだけで、メロドラマ小説がひとつ書けそうですが、そこはカフカのこと、この件はうっちゃり気味に。
    我らの主人公カール君は、会社社長の甥っ子だと判明して上流の教育を受け、その伯父から勘当され、ホテルのエレベーターボーイとして額に汗して働き、ボーイをクビになり、怪しい放浪者コンビと一緒に肥満した女歌手の世話に精を出し……と、階級も場所もめまぐるしく移動する事に。
    基本的に、カール君がある場所にたどり着く→その場の「ルール」に適応する→なんか理不尽な理由でその場所から追放されるという天丼がこの小説です。

 

    カフカは、ディケンズなんかも好きだったそうで、その場その場の「ルール」に適応してゆくカール君の奮闘ぶりは、「成長小説」として楽しめちゃいます。
     特に、エレベーターボーイの仕事を必死にこなすあたりの描写が丁寧で、このまま一労働者として頑張るのも悪くない、と思えるほど。
    しかし、カール君が「ルール」に適応した頃合に、カフカは必ず主人公の登ったはしごを外してしまいます。そもそも、カール君が頑張って適応している「ルール」自体、読んでいる私達からすると、ちょっとおかしい。

そんな展開が繰り返され、カール君の生きる場所は狭くなり、属する階級(クラス)はどんどん落ちてゆきます。
     我らが成長小説の主人公をいたぶるカフカ先生の理不尽ぶりたるや、本当にひどくて笑えてしまいます。


    しかし、読者ははたと気づかされるのです。この理不尽、この不条理が、小説の中だけのものでは無いことに。カール君を翻弄する「ルール」、彼を縛りつけたかと思うと呆気なく切り捨てる「システム」、一度落ちたらなかなか這い上がれない「階級」は、現実世界に存在するそれの、カフカ的な似姿である事に。

    カフカは、小説家専業だった時期の極めて短い勤め人作家です。労災保険関係の仕事や、工場の運営に携わっており(ちなみに仕事ぶりは優秀だったそうです)、中流階級から労働者階級まで、様々な階級の労働者と接する機会もあった。「失踪者」には、職業人カフカの経験に裏打ちされた、「社会の本質的な理不尽さ」が、余すところなく書かれている気がします。

 

    なんて書いちゃうと難しい小説っぽくなるかな?でもでも、主人公の健気さは頭ぐりぐりしたくなるし、いきなりレスリングの技で襲ってくるツンデレ美少女も出てくるし、平熱でボケまくるカフカ先生にひたすら突っ込みをいれる楽しみを味わえるし、おもしろい小説です。

    おもしろくて、やがて恐ろしいですが。

 

2.アリス・マンローイラクサ

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)

イラクサ (新潮クレスト・ブックス)

 

   これはかなりおとな向けの、渋い小説。

収録作の中では、O.ヘンリみたいな味のある「恋占い」、意外な人物の優しさが沁みる「浮き橋」、男性主人公なのでやや柔らかい「クマが山を越えてきた」が好きです。

 

3.シルヴィア・ブラス「ベル・ジャー」

ベル・ジャー (Modern&Classic)

ベル・ジャー (Modern&Classic)

 

    30歳で自殺してしまった詩人の、自伝的青春小説。
    アメリカでは、「ライ麦畑でつかまえて」の女子版と称されたりするらしいけど、確かに主人公の繊細さと、それに伴う残酷さを活写するあたり、通じるものがある。
    ライ麦畑と異なるのは、この小説の主人公が女性の肉体をもっている事。彼女は自分らしく生きようとしても、妊娠とそれに伴う人生の変化を恐れたり、初体験でも身体に傷を負ったり……ここら辺、読んでいて非常に辛いものがありました。
    一方で、ファッションや料理などの描写が見事。特に前半部分、夢見心地な筆致で描かれるニューヨークは素敵で、いい意味で「女性小説」だなあと思いました。

 

【本日の5冊】

「失踪者」より

カフカ事典

カフカ事典

 

 

 

変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

変身,掟の前で 他2編 (光文社古典新訳文庫 Aカ 1-1)

 

イラクサ」より(カナダ繋がり……)

赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫)

赤毛のアン 赤毛のアン・シリーズ 1 (新潮文庫)

 

「ベル・ジャー」より

 

ありがちな女じゃない

ありがちな女じゃない

 

 

 

 

 

2018年のマニフェスト、いまさら

 

 

    今年もあと3ヶ月ほどですね。
唐突ですが、2018年の10月から12月を小説読み月間にいたします。


    私はそれなりに読書する方だと思うのですが、小説を読むのが非常に苦手でして、年に10冊くらいしか読まないのが常態だったりします。
    小説が嫌いなのではなく、読みさえすればちゃんと感銘を受けるんですが、かなり集中しないと筋が追えない質で、他の本を読む時の2倍は消耗してしまうのです。
    小説以外にも読みたい本は沢山あるので、ついつい後まわしにしちゃうんですよね。


    小説を読まなくても人生は続きますが、小説の世界に潜る楽しみを知ってはいるので、あの快感をもう一度味わいたい気持ちも抜き難くあったり。


    いま、カフカの「失踪者(アメリカ)」を、私にしては丁寧に読んでいます。

    カフカの世界は、決していちげん様ウェルカムな世界では無いですが、素っ気ない調子で繰り出される「魁!!クロマティ高校」ばりのシュール展開に翻弄されるうち、「小説、面白いじゃないの」と改めて思いました。

消耗するからって読まないの、すごくもったいないな、とも。


    そこで、10~12月の3ヶ月間で25冊小説を読む事を目標に決めました。
     週に一度、その週に読んだ本の紹介と、そのうち一冊のレビューも書けたらとおもいますが、これはあくまでも努力目標にしておきます。
    1人で勝手に小説月間を送ればいいものを、わざわざ目標をたてたり、ブログに晒したりするのは、こうでもしないとなし崩しに小説を読まずに終わりそうだからです。
    マニフェストと言えば、ぶち上げておいて守られないものの典型ですが、このマニフェストがどうなるか?見守っていただければ幸いです。


    ちなみに、なぜカフカの「失踪者」から、「魁!!クロマティ高校」を連想したかと言いますと、主人公の立ち位置がよく似てるから。

    異常な状況に突っ込みをいれる立場のはずの主人公が、読者の立場から見ると充分異常な人に見えるというあたり、ほぼ同じです。

 

【本日の5冊】

 

 

日本の名随筆 (別巻84) 女心

日本の名随筆 (別巻84) 女心

 

 

生き延びるための世界文学: 21世紀の24冊

生き延びるための世界文学: 21世紀の24冊

 

 

 

失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)

失踪者―カフカ・コレクション (白水uブックス)

 

 

魁!!クロマティ高校(1) (講談社コミックス)

魁!!クロマティ高校(1) (講談社コミックス)

 

 

つっこみ力 (ちくま新書 645)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

 

 

 

オコエ瑠偉は日本人の可能性を拡張しているか、または50mタイムがみんなガバガバ問題

    大坂なおみ選手が、なんかすごい事を成し遂げたそうで(←テニスよくわからない人)、私の偏ったTwitterタイムラインも、大坂選手話で溢れていました。

 

    しかし 、残念ながらと言うか、やはりと言うか、アフリカ系日本人という存在を認められない方はいる様で、(まあ、韓国・朝鮮系日本人すら認めない方が多いんだから当たり前か)彼女の外見をあげつらって「この人は日本人と言えないんじゃないか」と、難癖つけちゃってる人も少々。

 

   そんななかで、私の思いを代弁してくれたツイートがこちらです。

 

@Simon_Sinさんのツイート: https://twitter.com/Simon_Sin/status/1039873769366376448?s=09

オコエ瑠偉選手や大坂なおみ選手のおかげで「日本人」の範疇が拡がった。「日本人離れした身体能力」とかいう表現をしたときに「でもオコエだったらソレくらい走れるじゃん?」的なツッコミができる。つまり日本人の可能性が広がったということでありとてもめでたい #ss954

 

    まさに、その通りで、大坂選手にしろ、オコエ瑠偉選手にしろ、「こんな見た目の」「こんな能力(フィジカルより技術優先とか、滅私奉公的なチームプレーとか)の」人間こそは、「日本人」なのだ!みたいな、下らない固定観念を打ち破ってくれる存在になりうると思います。

 

    むっちゃ同意しまくった私の脳裏に、しかし疑惑の影が……あれ、オコエって日本人離れってほど足が速かったっけ?

     いや、たぶん新日本プロレスオカダ・カズチカの方が速かったかも……

 

    嗚呼、そうなんです。

    オコエ瑠偉入団時の喜び>田中将大入団時の喜びって位のオコエ好き故に、

現地観戦の時は、とりあえず「オコエかフェルナンド出せー!!」と野次っとく(でも、島内もタケローもひじりんもetc…好きだから悩ましい)オコエ好き故に、 余計な事が気になってしまったのです!

 

   で、調べてみたところ、

オコエ瑠偉の50mタイム(高校在籍時)5.96、

オカダ・カズチカの50mタイム5.94、

普通にオカダ・カズチカの方が速かった件……

 

    でも、オカダ・カズチカってプロレスラーだし多少は盛ってるんじゃ、とお思いでしょうが、

https://youtu.be/tCszd778-Lo

ちゃんと動画が残ってます!

計測してるのが外道さん(たけしプロレス軍団出身)と言うのが気にはなるけど……。

 

    ちなみに、50m走の日本記録は、朝原宣治さんの 5.75だったりするので、ここでひとつの結論がでます。

    日本プロレス界の至宝にせよ、楽天が誇るスピードスター(いま、ちょっと盛った)にせよ、本職の陸上選手にはかなわないと言う厳粛なる事実です。

    それはそうですよね、オコエが打撃や守備の練習をしたり、オカダ・カズチカが風船を使った演出を試みてる間、本職の陸上選手はひたすら早く走る努力をしてる訳で……

 

    と、ここで終わったらスッキリだったのですが、オカダ・カズチカのタイムを調べるついでにひっかかって来た、驚愕の記録……高橋ヒロム9.75……あのー、日本記録にならんじゃ ってますが……

     と、ここまでだったら、「やっぱりプロレスはこうじゃなきゃ」「てか、一応同じ団体のエースより遅めに申告しておこうよ」「いや、ヒロムはジュニア級だからヘビー級のオカダより速いと言いたい可能性」「てか、外道さん、ちゃんと計測してたんだな(盛るんだったらもっと盛るでしょう)冬木軍出身なのにあんまり理不尽じゃない」など、プロレスだから、ってお話で済んだんですが……

 

    何となく、オコエもこれくらい盗塁して欲しい枠で調べた金子侑司のタイムが、5.7……日本記録越え?が出ちゃったよ!

    オコエもこれくらいの守備力を見せて欲しい枠、ロッテ岡田幸文が、5.6……さすが苦労人、明確に日本記録越えてます!

    オコエもこれくらい打ってもいいのよ枠、ソフトバンク本多雄一が、 5.9……なに、このちょっと遅い感。

 

    とまあ、軽くググっただけで分かったこと、もしかして、タイムの計測って結構いい加減?

 

甲子園球児の「50m走」タイムが日本記録超え続出という問題 #高校野球 #陸上 http://bunshun.jp/articles/-/8621

 

    こちらの記事を読んで疑問が氷解しました。

そもそも、電気計測で厳密に測る陸上選手のタイムと、ストップウォッチによる手動計測であろうその他の選手のタイム、単純に比べてはいけないようです。

 

一般的に、陸上競技で記録を示すときには、手動計測の場合、100m走では測定記録に0.24秒がプラスされる。手動の方が記録が速くなる誤差は“常識”とされている

さらに言うと、スタート時の姿勢(陸上では完全な静止を求められる)、フライング判定の有無など、手動計測の方が圧倒的に有利になるとの事。

 

プロ野球で1997年にシーズン62盗塁を記録し、ぶっちぎりの盗塁王を獲得した松井稼頭央(現・西武ライオンズ)ですら、当時のテレビ番組の電動計測の50mでは、6秒06かかっている。

って事なんで、各球団のスピードスターの皆さんも、同程度のタイムだと思われます。

しかし、62盗塁ってすごいな稼頭央さん。全盛期に楽天にいて欲しかった!楽天まだ無かったけど!

 

    まあ、厳粛なる事実その2!足が速くても、それを野球に活かせるとは限らない。

    その昔、陸上の日本記録保持者である飯島秀雄さんが代走専門選手として野球界入りしたものの、思う様な結果を残せなかったのは有名なお話。

     おそらく 、フィジカル面での「足の速さ」より、投手の癖とか牽制のタイミングを把握する能力とか、走塁判断とか、「足より頭」が求められるのが、野球の走塁なんです。

    あと、積極性な!オコエ!走塁死してもおばさん怒らないから、積極的に次の塁を狙っていいのよ!(と、いいつつヤジはとばす人)

 

    ところで、プロレスに足の速さって必要なんでしょうか?プロレスはまだまだニワカだから分かりません。

(正直に言うと、初めてオカダ・カズチカの激走動画を見た時から疑問だった)

    ただ、まあ、オコエオカダ・カズチカとヒロム(早く故障が治るといいですが)と恐妻家の岡田さんとあと、サニブラウン君あたりを並べて50mヨーイドンして欲しいよね!異種目どうしの対決!まさに猪木イズム!

 

 

    と、無闇に猪木で落としておいた所で、話は戻るんですが、私にとってオコエ瑠偉が日本人と定義できるか否かって、本っ当にどうでもいいんだなって思いました。

    私がオコエを愛しているのは、彼が日本国籍だからでも、アフリカ系だからでも、日本人の領域を広げる存在だからでもありません。

    彼が、楽天によくいる煮え切らない若手選手だから、そして可能性、いや、一場靖弘を愛した人だけに通じる単語を使いましょう、ロマンを感じさせてくれる存在だから好きなんです。

   

    同じ理由で、私は日本国籍を持たないルシアノ・フェルナンドも好きだし、東アジア系ながら外国人選手枠で頑張ってる宋家豪も好きなんです。(そもそも、外国人枠ってのも撤廃していいかな、と思ってますが、それはまた別の話)

 

    スポーツは、確かにナショナリズムを強化してしまう面もあるけど、色んな立ち位置で日本人してたり、外国人してたり、日本人であり外国人であったりする存在を教えてくれる事もある。

 

    ドイツ代表でトルコ系のエジル選手が訴えてた様に、成績が良い時はマジョリティに組み込み、成績が下降するなりマイノリティ扱いする態度は最低です。

でも、エジル選手を通してトルコ系ドイツ人を身近に感じた人も多かったはず、と思うのは、マジョリティ故の傲慢なのでしょうか?

 

    簡単に結論は出ないし、出しちゃだめでしょうけど、とりあえず私はオコエ瑠偉を愛し続けるし、外野にボールが飛んだらオコエ取れよ!」とさけび続けると思います。

 

   あと、外道さんのストップウォッチ計測が(0.24プラスすると)それなりに妥当っぽいのが素敵……

 

   【本日の5冊】

 

 

 

ホッテントット・ヴィーナス―ある物語

ホッテントット・ヴィーナス―ある物語

 

 

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)

人種とスポーツ - 黒人は本当に「速く」「強い」のか (中公新書)

 

 

To Be The 外道

To Be The 外道 "レヴェルが違う!"生き残り術