しみじみ旨い文章のご馳走 池内紀「あだ名の人生」
このところ読書スランプで、あまり本を読めていなかったのは、以前のエントリーで書いた通り。
オマケにとある故人のゴシップを掘ることにはまってしまい、我ながら悪趣味だと思いながらも2ちゃんねる(いまは、5ちゃんねるなんでしたっけ?)だの、週刊文春のWeb版だのを回遊してました。
楽しいんだけど、確実に人間としての格を落とす行為です……でも、止められない私は、所詮2ちゃんねる世代……
そんななか、電車の中でだけちびちび読んでいたのが、ドイツ文学者池内紀さんの「あだ名の人生」という伝記集。
池内さんの伝記ものは、簡潔な中に対象に対する思いやりが感じられて、読んでいて心地よい。
また、言葉を尽くし過ぎないが故の、余韻というか滋味があって、じんわりとしみてきます。
東郷青児に関する章など、ゴシップ的な興味も満たしてくれる文章でありながら、読後感は静か。
私もこういう文章をかける人間になりたいものですが、たぶんそれには相応の蓄積と人生経験が必要。
青年から老年にメタモルフォーゼできる人間など存在せず、枯淡の境地とか、可愛いおばあちゃんという地点に到達するには、中年という長い坂をダラダラ登りきる必要があるのです。
私など中年坂の入り口で躊躇ってる段階なので、2ちゃんねるはそこそこにして、もう少し研鑽を積まねばなりませんね。
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モーツァルトの息子 史実に埋もれた愛すべき人たち (知恵の森文庫)
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